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米良愛ギラギラ 前編
『村で会社をやる理由』

濱砂 裕晃紀さん(40歳/村所地区)

商売ってなんて簡単なんだ

「村に会社を置いているメリットなんて何もないですよ」

のっけからそう言い放ったこの人物は、西米良村で(株)ハマテックを経営する濱砂裕晃紀さん。村で生まれ育った裕晃紀さんは高校を卒業後に東京で就職。21歳のときに帰村して以来、さまざまな事業に取り組んできた村きっての事業家だ。

裕晃紀さんの事業家への道のり、そのスタートは再生バッテリーの販売だった。

「21歳で村に戻っていくつか仕事をしたけど、その稼ぎでは家族に不自由な思いをさせてしまうと思って、会社を辞めて再生バッテリー事業を立ち上げることにしたんです。1人目の子どもが生まれてすぐのことだったので周りにはこっぴどく怒られました(笑) でも、なんとかやっていけるという感覚があって。特に根拠があったわけではなかったんですけど」

そうしてスタートした初めての事業は、持ち前の洞察力と行動力もあってうまく軌道に乗る。さらに、そこでの利益を原資に始めた太陽光パネル販売事業も順調に売り上げを伸ばしていく。こうして若き事業家となった裕晃紀さんだが、順調な滑り出しを切れた理由は、剣道の縁による学びと気づきだったという。

「西米良では昔から剣道が盛んなのですが、僕も小さい頃から打ち込んでいました。自分で言うのもなんですが、全国でも結果を残していたので各地にたくさんの仲間ができたんです。その道を極める人というのはどんなことをやっても結果を残すんでしょうね。剣道でつながった人たちは、その後、各界で上のポジションに就いていて、彼らから事業を始めるに当たってたくさんのことを教えてもらいました。それまで経済の勉強なんてしたことがなかったんですけど、需要と供給について学んだときは、“商売とはなんと簡単なんだ”と思いまいたよ(笑)」

裕晃紀流聞き出し術

数多くの事業家から話を聞き、そこで学び、気づいたことを自らの事業につなげていった裕晃紀さん。話を聞く場として多かったのがお酒の席だったという。しかし、こう書いては失礼だが、どう見ても酒に強そうな裕晃紀さん、実は一滴も飲めないのだ。

「お酒を飲みながら話をしていると、酔いも手伝っていろいろな話が出てくるわけですよ。僕は飲めないんですけど、ママさんに伝えておいてそれっぽい色の飲み物を出してもらう。で、酔っ払っている振りをして付き合うんですけど、こっちはまったくのシラフなのでしっかり覚えているというわけです。学んだというより盗んだといった方が正解かな(笑) そういった場で出てくる話は、後のビジネスにかなり活かせましたよ」

その後、さらに経験を積んだ裕晃紀さんは、2009年25歳の時、故郷に(株)ハマテックを設立する。村での法人誕生は36年ぶりのことだった。

もしもの時は会社をたたんでのんびりと(笑)

「西米良で起業したのは、村外で稼いだお金を税金として村に納めるため。ただ、それだけの理由です。大好きな西米良が無くなってしまったら嫌ですからね。うちは99%村外のお金で会社をまわしているので、ぶっちゃけ村外に拠点を置いた方が儲かるんです。僕も40歳になって移動も大変になってきましたしね(笑)」 

冒頭の裕晃紀さんの言葉にあるように、事業に関して言えば、現状、西米良に拠点を置いておくことのメリットはないという。それでもこの場所に居続けるのは、故郷への想いがあればこそ。それだけ裕晃紀さんの西米良愛は大きいのだ。

「ここでやっている意味って何なんだろうって自問することがたまにあるんですけど、やっぱり西米良が好きだからってなるんですよ。そこがあるから頑張れる。そこが揺らぐと正直この先はわかりません。まぁ、揺らぐことはないと思いますけど。もしも揺らいだ時は会社をたたんで村でのんびり過ごしますよ(笑)」

▲2019年にハマテックが村内にオープンした『STELLA SPORTS』。グランピングとダッキーを楽しむことができ、村外から多くの客が訪れる。この事業に取り組んだのは「村に雇用を生み、次の世代につなげていけるものをつくりたい」という想いから

取材・文:田中聡(宮崎南印刷)
撮影:稲吉良太(宮崎南印刷)