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もはやここが私の実家。優しすぎる義母とともに②

坂本なぎささん(串間市出身)

西米良村役場から徒歩2分、国道219号沿いに店を構える『ショッピングセンターさかもと』。日用品から生鮮食品、お惣菜まで多彩に揃うこちらの店は、ものの売り買いだけに終わらない、村内外の人たちの心の拠り所。移住者であり、嫁として姑とともに店に立つ坂本なぎささんに話を聞いた。

村内外から人が集まる店に
姑とともに立ち20数年

なぎささんの夫・哲也さんのご両親である九州男(くすお)さんとサダ子さんは、この場所で40年以上『ショッピングセンター さかもと』を経営している。役場や郵便局、病院などが集まる村の心臓部で、人の往来が多い。

すぐそばを流れる一ツ瀬川は、アユなど渓流釣りを楽しむ人々のお目当てのスポットとなっている。村外から釣りをするために定期的にやってくる人たちもまた、『さかもと』の常連客だ。

▲生鮮食品から日用品まで生活に欠かせないものが並ぶ『ショッピングセンター さかもと』の店内

店内をのぞくと、決して広くはないスペースに多種多様な商品が並ぶ。義父・九州男さんが週2回村外に出向き買い付けてくるそうだが、店の販売商品だけでなく、学校や保育園の給食用食材も調達する卸業も行っており、村の物流拠点にもなっている。

ファンが多い、義母がつくる「おいなりさん」

「お惣菜が名物なんですよ。特に義母のおいなりさん、ホントにおいしいんです。他にも油味噌とか、お煮しめとか、全部義母が手作りしています」
と、なぎささん。

▲大きなおいなりさん5個に手作りの漬物を添えて470円

哲也さんが働く米良の庄が管理運営する『西米良温泉ゆた〜と』でも、義母・サダ子さんのおいなりさんが並ぶ。温泉の販売コーナーで売り切れた場合、『さかもと』に「まだありますか? ◯パック取り置きお願いします」と電話が入ることもしばしば。また、村外のファンは西米良に行くとなると「今日そちらに行くので、おいなりさん◯個予約をお願いします」とあらかじめ予約をしてくる人も少なくない。もはや西米良の名物と言えそうだ。

取材班もそのおいなりさんをいただいた。お揚げにぎっしりと酢飯がつまっていて、具材もたっぷり。ボリュームがあるのにぺろりと食べてしまうこの味の秘密は?
「何なんでしょうね。義母は目分量で作るので、教えてもらっても私には再現できない味なんです、これが」
と苦笑いするなぎささん。

サダ子さんが数十年かけて毎日作ってきた、オンリーワンのおいなりさん。西米良に来たら、ぜひ味わってほしい。

▲他にも、鶏モモの照り焼きや煮しめ、魚のタタキなど日替わりで並ぶ。どれもボリュームの割には価格が安いのにも驚かされる

思いやりでつながった
村内・村外コミュニケーションの中継点

店の常連客の目的は買い物だけではない。聞き上手ななぎささんやサダ子さんにいろんな話をしては帰っていく。役場職員も舌を巻くほど、この店でつながるコミュニティには村内のコアな情報が集まっているのだそう。

店の前を救急車が通ると、
「今のは誰やったんかなー?」
と心配したり、

「◯◯は今日は営業しているやろか?」
「△△の電話番号わかる?」

そんな問い合わせにも一つひとつサダ子さんは対応する。
「うち、便利屋さんじゃなくてお店なんですけどね」
となぎささんは苦笑いします。

とは言えサダ子さんの影響か、毎日一緒にお店に立つなぎささんも、常連さんが来ないとつい心配になってしまうそう。

「『最近来ないけど、大丈夫?』と電話をかけることもあります。小さな村だからこそなんでしょうけど、やっぱり心配になりますね」

『さかもと』で接客をすること20数年。そんななぎささんを、夫の哲也さんは頼もしく感じている様子。
「いつの間にかすっかり村に馴染んでいて…。私よりも顔が広いんじゃないでしょうか」

▲夫の哲也さん(写真右)は、村の観光業を支える「株式会社 米良の庄」の社員

▲2〜3月、温泉ゆた〜とに飾られた「桶びな」。「竹びな」「ゆりびな」とともに、哲也さんたちが毎年飾り、温泉客の目を楽しませている。

▲接客をするなぎささん(写真中)とサダ子さん(写真右)

「優しすぎる義母」とこれからも一緒に

呆れるくらいにおひとよしのサダ子さんを、一番近くで見てきたなぎささん。
「誰に対しても優しくて、接し方が変わらないです。お店にいろんな人が集まるのも、義母の人柄が大きいと思いますね。サービス精神が旺盛というか、時々そこまでしなくても…って思うほどです」
と感謝と尊敬の想いがあふれる

春になると、ふきのとうやワラビなど、村のあちこちでいろんな山菜が採れるのも西米良の魅力。料理上手なサダ子さんは、春先にはサドガラ(イタドリ)を上手に調理してくれるのだそう。
「あのコリコリした食感に仕上げるのが義母は上手で、本当においしいんです。生まれた実家より西米良の暮らしが長くなった今、もうこっちが実家みたいに感じますね(笑)」

夜、ホームシックにかかり涙していた22歳のなぎささんに、今の様子を伝えたらどんなにか安心するに違いない。

取材・文:矢野由里(dig edit & design) 撮影:中山雄太(KOYU DESIGN STUDIO)